研究室

vol.11.改正建築基準法が施行されて半年、その影響は!?

2007/12/26

平成17年11月に発覚した姉歯事件を契機に、構造計算書偽装問題の再発を防止するため、建築基準法、建築士法等が改正され、平成19年6月20日に施行されました

 

1.建築基準法改正の概要

(1)建築確認・検査の適正化

1.一定の高さ以上の建築物(木造:高さ13m超または軒高9m超、鉄筋コンクリート造:高さ20m超)について、知事指定の指定構造計算適合性判定機関による構造計算審査(ピアチェック)の義務付け
2.3階建以上の共同住宅について、中間検査を法律で義務付け
3.構造計算適合性判定制度の導入に伴い、建築確認の審査期間が、21日間から35日間へ延長、 ただし詳細な構造審査を要する場合には最大で70日間

(2)指定確認検査機関の業務の適正化 

1.指定要件の強化(損害賠償能力、公正中立要件、人員体制等)
2.特定行政庁による立入検査権限を付与
3.指定確認検査機関に不正行為があった場合、特定行政庁からの報告に基づき、指定権者による業務停止命令等の実施

(3)建築士等の業務の適正化及び罰則の強化

1.建築士等に対する罰則の大幅な強化
2.名義貸し、違反行為の指示等の禁止を法定し、違反者に対する処分を強化

(4)建築士、建築士事務所及び指定確認検査機関の情報開示

1.処分を受けた建築士の氏名、建築士事務所の名称等の公表
2.指定確認検査機関の業務実績、財務状況、監督処分の状況等の情報開示の徹底

(5)住宅の売主等の瑕疵担保責任の履行に関する情報開示

宅建業者に対し、契約締結前に保険加入の有無等について、相手方への説明を義務付け。

(6)図書保存の義務付け等

図書保存の義務付け等特定行政庁に対して、図書の保存を義務付け。

耐震強度が基準を下回ると認定されたマンションは、それぞれ建替えや耐震補強等対応策が決まり、再出発への目途がついたものの、二重ローンや1戸あたり約2000万円もの工事費用負担が重くのしかかっており、姉歯事件が社会に与えた影響はあまりにも大きいものです。発覚前に大規模地震が発生し、倒壊していたら、その被害はさらに広範囲に及んだことでしょう。それを思うと、今般の改正建築基準法におけるあらゆる面での厳格化は至極尤もなこととうなずけます
が、その一方で、建築業界は大混乱に陥っているのです。

2.建築現場の混乱

以下は改正法施工前後の建築確認の申請件数と確認件数、及び新設住宅着工戸数の推移です。

7月の申請件数は対前年同月比-40.6%、確認件数は-39.4%と、4月~6月の水準に比し大幅な落ち込みを示していることがわかります。ただしその後はやや持ち直しています。
また近畿圏の新設住宅着工戸数は7月に対前年同月比が-28.5%を示し、その後減少幅は拡大、10月には-48.4%と大幅な落ち込みを示しており、建築確認の遅れによる着工の減少が顕著に現れています。

以下は日経BP社の調査による、建築事務所等の現場の声の集約です。

改正法下では建築確認がなかなか下りないだけでなく、確認申請業務の負担が大幅に増加しました。50%の建築関係者が、仕事の手間が従来の2~3倍、もしくは3倍以上に増えたと感じており、半数以上が労働時間が長くなったのに収入が減ったという現実を感じています。
(情報:ケンプラッツ http://nfm.nikkeibp.co.jp/fa/free/column/kokodake/index.html

京都では、今年の9月1日に新景観政策が施行されました。建築基準法の改正による審査機関の処理の遅れに加え、新景観政策では高さ規制等が強化され、手続きも煩雑になりました。
「夜も作業しているが追いつかない。」と困惑するのは民間の京都確認検査機構(中京区)の樫田社長。木造2階建住宅でも以前は1週間あれば出ていたのが、現在は1ケ月近くかかるとのことです。また民間でも行政でも、建築確認が遅れた結果、建売の契約がキャンセルになった事例も出ているといいます。
改正建築基準法に伴う混乱は全国に起きていますが、京都市内では新景観政策の施行も加わった分、混乱に拍車がかかっているようです。(情報:京都新聞)

3.不動産鑑定の現場ははたして・・・

我々不動産鑑定士が改正建築基準法の影響を受けるのは、どんな局面が考えられるでしょうか?
例えば開発法を適用する際に、その土地に最もふさわしい建物を想定し、これにかかる事前準備期間、造成・建築期間、販売期間等の開発計画を練るわけですが、着工までに要する事前期間の想定を従来通りに捉えていては現実に即さない評価を生み出します。
土地残余法の適用の際は、想定建物の建築期間の想定が異なってくるでしょう。半年が1年、1年が1.5年になれば試算価格が大きく下落しそうです。
さらに審査期間が21日から最大70日まで大幅に延びたことで、待機期間の金利相当額等の上乗せによるコストアップが生じ、ひいては再調達原価の上昇を引き起こすことも想定されます。
単に法や体制の厳格化に伴う手続きの煩雑さや、着工までの事前期間の延長だけではありません。待つ時間が延びただけ、書面や手間の煩雑化は建築士だけ・・・ということではなく、それらが生み出す波及リスクも問題なのです。建築確認が遅れた結果、建売の契約がキャンセルになった事例などは、まさに波及リスクですよね。これらのリスクは収益還元法適用の際の利回りや現在価値に割り戻す際の複利現価率に折り込むべき事項です。リスクが高くなれば、鑑定評価額は下がります。
二度と姉歯問題の再発を許さないために、法体制の厳格化には賛成ですが、建築確認処理の円滑化に向けた対応策に総力を注いでもらいたいものです。

相談窓口

京都事務所
075-252-2367
京都府京都市中京区烏丸通竹屋町下ル 少将井町230-1吉村ビル3F
大阪事務所
06-6121-3014
大阪府大阪市中央区北浜1-1-27
グランクリュ大阪北浜509号室
大津事務所
077-525-5260
滋賀県大津市京町3-2-10京町アークビル4F