豆知識

Vol.55 地盤の液状化について

2011/11/28

 今回の豆知識では、東日本大震災でも問題の1つとなった「地盤の液状化」について取り上げます。地盤の液状化の問題は通常時にはあまり議論になることはありませんが、東日本大震災や阪神淡路大震災のような大地震が発生すると主に沿岸部埋立地等において建物やインフラに大きな被害を発生させます。また、この地盤の液状化に対する危険度は、不動産の価格に影響を与えると考えられます。従って、不動産鑑定士は不動産の適正な価格を求める専門家として、このような不動産の価格の形成に影響を与える要因について十分な知識と理解が必要と言えます。

1.地盤の液状化とは

 地盤の液状化とは、テレビ等の映像でよく紹介されていますが、通常時は十分な固さを有する地盤が地震などの振動により液体のようになり、地盤内の砂混じりの水が地表面に湧き出してくる現象のことをいいます。一般的に砂状の地盤(砂質地盤)は通常時においては比較的良い地盤ですが、ひとたび液状化が起きると軟弱地盤となり、砂混じりの水が地表面に噴き出したり、部分的に陥没したりして、建物や地中に埋設していた配管類に損傷を与えます。
 液状化の発生要因は、①緩く堆積した砂質地盤であること(体積変化が大きい)②地下水位が高いこと。③地震などにより地盤に大きな振動が生じること④拘束力が小さいこと(上載荷重が小さい)⑤地盤の年齢が若いこと⑥比較的粒径が揃った砂質地盤であること。(砂粒子間の隙間が多い)等が挙げられます。これらの内、①緩く堆積した砂質地盤であること②地下水位が高いこと。③地震などにより地盤に大きな振動が生じることの3つの条件がすべてそろった場合に液状化が発生し、逆にこの3つの条件のうち1つでも欠けると液状化は発生しないと言われています。

2.液状化のメカニズム

 砂や砂礫(砂より粒径が大きいもの(概ね粒径2mm以上))からなる砂質地盤は、砂の粒子同士の摩擦で安定を保っています。砂質地盤は通常はこのような砂粒子同士の摩擦力により地盤上の建物などを支持しています。
 乾燥した砂質地盤では、砂の粒子の間には空気があるため、砂糖やコーヒーなどを瓶に移した際に、その瓶を叩くと詰まって表面が沈下するのと同じような現象が生じます。このような砂質地盤で地表面に近い高さまで地下水がある(地下水位の高い)場所では、砂の粒子間の隙間に水があるため、このような地盤に連続した振動が加わると、砂の粒子が動くことにより粒子間の摩擦力が低下するとともに、隙間にあった水の圧力(間隙水圧)が高まります。このとき間隙水圧がその部分より上の地表面までの砂(土)の重量による圧力(土被り圧)以上生じたときに砂粒子間の摩擦が切れ、砂粒子が水に浮いた状態である液状化現象がおきます。(図1参照)

注)「国土交通省北陸地方整備局HP「液状化とは?」に記載の図」を一部加工して転載
注)「国土交通省北陸地方整備局HP「液状化とは?」に記載の図」を一部加工して転載

図1 地盤の液状化概要図

3.液状化が起こりやすいところ起こりにくいところ

 液状化しやすい場所は、一般的に川沿い、湖沼沿い、海沿いなどの低地や旧河道、埋立地で地下水が地表近くにあり、粘性が少ない砂や砂礫などからなる地盤のところが挙げられます。
このような場所は、上記液状化3条件のうち①軟弱砂質地盤かつ②高い地下水位である可能性が高く、地震などの振動が加わることにより液状化が生じることになります。
 逆に山地斜面や丘陵・台地などは通常地下水位が低く液状化の心配はほとんどないと言われています。また厚い軟弱粘土層からなる地盤では、常時加わっている建物などの重さによる沈下やめり込み破壊を心配する必要があるため一般的には良い地盤と言えませんが、粒子間の粘着性が高いため液状化の心配はないと言われています。
 また、砂や砂礫からなる地盤であっても固く締まった地盤や地下水位が低い地盤であれば液状化の心配はありません。一般的な戸建住宅では地下水面までの深さが10メートル以上もあれば、通常の場合液状化の心配はないと言われています。

4.液状化危険度予測について

 地盤の液状化に関する公開情報として主要な自治体では「液状化危険度予測マップ」等が作成されています。(※1)
 京都府、大阪府、滋賀県の液状化危険度予測マップを以下に示します。尚、滋賀県では海溝型地震と内陸直下型地震に分けて、PL値が10になる地表面加速度毎に、大阪府では海溝型地震と内陸直下型地震に分けて、PL値が15になる地表面加速度毎に液状化の危険度を地図上に着色して表示し、京都府では各断層により発生する可能性のある地震動毎に各地のPL値をそのまま地図に着色して表示しています。
 尚、各自治体ともに500mメッシュでの評価となっているため、地図で表示される位置は500m以内の誤差が生じる可能性があることに注意が必要です。

注)京都府・市町村共同 統合型地理情報システム(GIS)の地震被害想定調査マップ(液状化危険度分布図)を転載
注)京都府・市町村共同 統合型地理情報システム(GIS)の地震被害想定調査マップ(液状化危険度分布図)を転載

注)滋賀県防災情報マップ・液状化危険度図(内陸直下型・海溝型)を転載
注)滋賀県防災情報マップ・液状化危険度図(内陸直下型・海溝型)を転載

注)大阪府地震被害想定調査・ハザードの想定(液状化)を転載
注)大阪府地震被害想定調査・ハザードの想定(液状化)を転載

※1
液状化危険度マップでは、通常「PL値(液状化指数)※2」と言われる指数を用いて各地における液状化の危険度が評価されています。この評価方法は、「道路橋示方書・同解説」に準じた手法であり、地盤の地表に近い部分での地震動計算結果から地中に発生する力(せん断応力)を求め、液状化の対象となる地中の層(深さ)ごとの液状化に対する抵抗率(FL値※3)を求め、地層全体の液状化可能性指数(PL値)を評価するものです。一般に、PL=0.0 ならば液状化発生の危険性がない、あるいは極めて少なく、0.0<PL≦5.0 ならば液状化発生の可能性が低く、5.0<PL≦15.0 ならば液状化の可能性があり、15.0<PL ならば液状化の危険性が高いと判断されます。
※2 PL 値
PL 値とは、ある地点の液状化の可能性を総合的に判断しようとするもので、各土層の液状化強度(液状化に対する抵抗率(FL値))を深さ方向に重みをつけて足し合わせた値のことをいいます。
※3 FL 値
FL値とは、液状化の予測を行う際に用いられる値であり、地盤内の深さごとに液状化の可能性を判定するものを言います。その深さの地盤の液状化に抵抗できる力(R)と地震によって地中に発生する力(L)との比(R/L)をとって、液状化に対する安全率(FL値)として算出されます。従って、FL値≦1の場合はその深さにおいては液状化の可能性があり、FL>1なら可能性が少ないと判断されます。

5.液状化対策について

 液状化の対策は、主として前記液状化発生要因を取り除くことになります。従って「緩い砂質地盤を締め固めることまたは固着させてしまうこと」、「地下水位を下げること」、「液状化しにくい地盤に置き換えること」などを実現するために各種対策が講じられています。
具体的には下表1のような工法があります。

表1 液状化対策の主な工法

①置換工法 ②排水工法
(グランベルドレーン工法)
③締固め工法
(サンドコンパクションパイル工法)
④固結工法
(深層混合処理工法)
⑤地下水低下工法
(ディープウェル工法)
軟弱層の土を除去し、良質土又は貧配合のコンクリート(単位面積当りのセメント使用量が少ないコンクリート)に置き換える工法。 砂地盤中に透水性の良い砕石の杭を造成することによって、地震発生時の過剰間隙水圧を消散させ、液状化を防止する工法。 ケーシングパイプを先端閉塞の状態で地中に貫入させ、所定の深度に達したところでケーシング内に砂を入れ、ケーシングを引き抜きながら、砂を地中に圧入することにより、締固められた砂杭を形成する工法。 セメント系等の改良材を水と混合して地盤に圧送し、攪拌翼により攪拌混合することにより地盤中に強固なセメントパイルを造成する工法。 対象砂質土中に0.5~1.2m の径で削孔し、直径0.3~0.8m のストレーナー管を挿入して、その周囲をフィルター材で充填して井戸をつり、その中に排水ポンプを設置・揚水することにより地下水位を低下させる工法。

 液状化対策としては上記のような工法がありますが、一般的なマンション及び戸建住宅における対策については次のような状況です。
まずマンションについては、硬い地盤の支持層まで杭を打ち込む杭基礎が採用されていることが多く、また上記に示したような工法による対策も十分可能と言えます。尚、最近のマンションの建築確認においては液状化に対する審査も行われているようです。
一方、戸建住宅については、新築時に置換工法や固結工法等による地盤改良や支持層まで支持杭を打つことなどの対策は可能なようですが、対策費用が高価であることやたとえ自分の土地の地盤は液状化しない場合でも周辺の地盤の液状化による沈下等の影響を受けることやライフラインの寸断などの可能性が高く、結局は使用できない家になってしまうことなどからなかなか普及されるに至っていないようです。

6.液状化に対する法規制

 地盤の液状化については、日本では1964年の新潟地震で注目されました。また世界的には1906年のサンフランシスコ地震の際に液状化が確認されています。従って、地盤の液状化は決して新しい問題でなく技術的にも解決可能な課題と言われています。しかしながら、阪神・淡路大震災や東日本大震災においても地盤の液状化が問題となっています。その原因のひとつは法規制の整備が遅れていることが挙げられます。そこで、地盤の液状化に関連する法規制の現状について以下に示します。

(1) 宅地造成規制法
 宅地造成規制法は、宅地造成に伴う崖崩れ又は土砂の流出による災害防止が目的であるため、盛土を締め固めるなどの対策は義務づけられていますが、具体的に液状化対策についての記載はありません。従って、宅地造成規制区域において宅地造成工事を行う場合でも、その設計や役所による技術審査において具体的に液状化の検討がなされているケースは少ないと考えられます。
 一方、国土交通省総合政策局民間宅地指導室長が、都道府県・政令指定都市・中核市・特例市宅地防災行政担当部長あてに平成13年5月24日付け国総民発第7号により通知した「宅地造成等規制法の施行にあたっての留意事項について」では、地盤の液状化について、「Ⅸ・11・1液状化対策の基本」にて「地盤の液状化現象により悪影響を生じることを防止・軽減するため、液状化に対する検討を行い、必要に応じて適切な対策を行うものとする。」旨記載されています。また、「Ⅸ・11・2液状化地盤の確認調査」、「Ⅸ・11・3液状化地盤の判定」、「Ⅸ・11・4液状化対策工法の検討」により少し踏み込んだ記載があります。
しかしながら、この通知に基づいてどのくらい具体的な液状化の検討及び審査が行われているかについては定かではありません。

(2)公有水面埋立法
 公有水面埋立法では、災害防止に十分な配慮をすることを求めていますが、地盤の液状化対策等に関する記載はありません。

(3)都市計画法
 都市計画法においては、都市計画法施行令第28条1項4号において「盛土をする場合には、盛土に雨水その他の地表水又は地下水の浸透による緩み、沈下、崩壊又は滑りが生じないように、おおむね30センチメートル以下の厚さの層に分けて土を盛り、かつ、その層の土を盛るごとに、これをローラーその他これに類する建設機械を用いて締め固めるとともに、必要に応じて地滑り抑止ぐい等の設置その他の措置が講ぜられていること。」、また第28条1項その他各号において地盤の沈下、隆起、崖の崩落、土砂の流出等について措置が講じられるように記載があるのみです。従って、都市計画法においても液状化に対する規制や基準はないようです。

(4)建築基準法
 建築基準法では、第19条(敷地の衛生及び安全)第2項において、「湿潤な土地、出水のおそれの多い土地又はごみその他これに類する物で埋め立てられた土地に建築物を建築する場合においては、盛土、地盤の改良その他衛生上又は安全上必要な措置を講じなければならない。」、また建築基準法施行令第38条において「建築物の基礎は、建築物に作用する荷重および外力を安全に地盤に伝え、かつ地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。」とされており、明確ではないものの液状化についても設計に反映すべきであると読み取れます。
また、平成13年7月2日国土交通省告示第1113号の第2で『地盤の許容応力度を定める方法は、~ ただし、地震時に液状化するおそれのある地盤の場合 ~ にあっては、建築物の自重による沈下その他の地盤の変形等を考慮して建築物又は建築物の部分に有害な損傷、変形及び沈下が生じないことを確かめなければならない。』とされ、それ以前の昭和46年1月29日建設省告示第111号からただし書が追記され改められています。
 従って、当該告示の内容からも建築基準法においては液状化の検討の責任は設計者にあると言えます。
尚、上記「地震時に液状化するおそれのある地盤」については、おおむね次のイ~ニに該当するような砂質地盤との見解が示されています。
 イ 地表面から15メートル以内の深さにあること。
 ロ 砂質土で粒径が比較的均一な中粒砂等からなること
 ハ 地下水で飽和していること。
 ニ N値がおおむね15以下であること。
但し、一般的な2階建木造等の戸建住宅は、建築基準法6条に基づく建築確認の対象建築物の中でも最も簡易な建物と位置づけられている(第6条第1項第4号(通称「4号もの」))ため、液状化の可能性の判断は設計者に委ねられており、建築確認による審査の対象外となっています。

(5)住宅の品質確保の促進等に関する法律
 住宅の品質確保の促進等に関する法律では、「建物の品質確保」は定めていますが、「土地や地盤の品質」はこの法律の対象範囲外とはなっており、液状化についても対象外となります。
従って、たとえ「設計住宅性能評価」「建設住宅性能評価」を受けた建物であっても、これをもって液状化による被害を免れることはできません。

(6)宅地建物取引業法
 宅地建物取引業法では、重要事項等の説明において、過去にその土地で液状化被害があった場合や、その土地について沈下の可能性があるなど宅建業者が知り得た情報は説明しなければなりませんが、それ以外では説明の義務はありません。従って、宅建業者の通常の調査で液状化について知りえない場合には、法的には責任の範囲外と言えます。

 以上のように法規制において地盤の液状化について具体的に示しているものは建築基準法だけであり、実際の建築確認においても構造計算適合性判定がなされる建築物においては地盤の液状化についても審査の対象になっているようです。但し、先に記載の通り4号ものと言われる2階建の木造戸建住宅などの小規模建築物については、建築確認において構造計算書等の提出が不要とされているため建築確認による第3者チェックはなされないことになります。

7.地盤の液状化と鑑定評価

 地盤の液状化は、日本で注目されてから既に50年が経とうとしていますが、不動産鑑定評価においてこの地盤の要因がどのように価格に反映されているのでしょうか?
 現在の「不動産鑑定評価基準」においては、「第3章 不動産の価格を形成する要因」において一般的要因及び個別的要因の自然的要因の1つとして「地盤等の状態」が例示されています。また、「土地価格比準表」においては、地域要因及び個別的要因の環境条件において「地盤の良否」という価格形成要因の格差の内訳が記載されており、概ね±4%の格差となっています。従って、地盤の液状化については、これらの地盤の良否という要因として鑑定評価に反映されることになると考えられます。
 では鑑定評価実務において地盤の良否をどの程度反映しているのでしょうか?
例えば、旧河川やため池などの跡地並びに昔から大きな水害が頻繁に発生しているような土地については
軟弱地盤である可能性が高いという判断から減価する場合はありますが、このような場合でも減価を行わない場合もあります。このような判断の相違は、適切かつ十分な情報が得られないことに起因していると考えられます。
これらの地盤の良否という要因を鑑定評価額に適切に反映するためには、地盤の特性(土壌・土質の情報)及び良否の把握、並びに様々な不動産に対する液状化対策工事費用の把握が不可欠ですが、現状ではこれらの情報が乏しいことは否めません。
 一方、現在では地域差がありかつ情報量は少ないものの地質断面図や地質柱状図等の地盤情報はインターネット等でも入手が可能になってきています。また先に示した液状化危険度予測マップも地盤情報の1つと言えます。さらに建築基準法に関連する建設省告示第1793号(昭和55年11月27日、最終改定:昭和62年11月13日建設省告示第1918号)において、地盤の硬軟を第1種地盤~第3種地盤に区分し地盤の良否の指標が示されており、これらも地盤の良否の判断材料になると考えられます。
しかしながら、液状化対策工事費については、まず様々な対策工事の各不動産への適合性、長所・短所、費用等を整理することが必要になりますが、現状では活用可能な公平かつ具体的な指標はないものと思われます。
 従って、我々不動産鑑定士は、今後以上のような地盤の良否や液状化対策費用等に関する情報の収集に努め、地盤の良否ひいては地盤の液状化の危険度について鑑定評価額に適切に反映できよう一層の努力をする必要があると考えます。

[参考文献]
国土交通省北陸地方整備局HP  http://www.hrr.mlit.go.jp/bosai/niigatajishin/paneru/ekijoka/introduction.html
国土交通省総合政策局民間宅地指導室長通知「宅地造成等規制法の施行にあたっての留意事項について」平成13年5月24日http://www.mlit.go.jp/crd/web/jogen/ryuui.htm
滋賀県HP 防災情報マップ http://shiga-bousai.jp/internet/map/
大阪府HP 大阪府地震被害想定http://www.pref.osaka.jp/kikikanri/higaisoutei/index.html
京都府・市町村共同 統合型地理情報システム(GIS)
http://g-kyoto.pref.kyoto.lg.jp/gis/usher.asp
山梨県HP http://www.pref.yamanashi.jp/shobo/documents/74972186223.pdf
東京の地盤(東京都土木技術支援・人材育成センター)http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/geo-web/00-index.html
日本建築学会 住まいまちづくり支援建築会議 情報事業部会 復旧・復興支援WG「液状化被害の基礎知識」 http://news-sv.aij.or.jp/shien/s2/ekijouka/
東京の地盤(WEB版)
http://doboku.metro.tokyo.jp/start/03-jyouhou/geo-web/pdf/113sibuya.pdf
日本国内の地盤図一覧
http://www.geocities.co.jp/Technopolis/2890/link_new/Geomap.html
平成22年版不動産六法/東京法経学院講師室 (監修)
液状化現象/鹿島出版会 國生剛治著
不動産鑑定2011年9月号/住宅新報社
不動産鑑定評価基準(国土交通省土地・水資源局地価調査課)
土地価格比準表(国土交通省土地・水資源局地価調査課)
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