豆知識

Vol.52 建設協力金について

2011/10/17

不動産の賃貸借にあたっては、敷金、礼金、権利金、保証金といった様々な名目で一時金の授受があり、その性格・用方・金額の多寡も様々ですが、「建設協力金」も賃貸借契約にあたって授受される一時金の一つです。

Ⅰ.建設協力金とは

「建設協力金」は、建物賃借人(予定者)が建物賃貸人(所有者)に対して差し入れられる一時金です。「建設協力金」がよく利用されるケースとしては、ロードサイドのコンビニ、スーパー、GMS等の商業用途に係る賃貸借契約が挙げられます。新規出店を企図している小売業者等が、計画している土地の所有者に対して、事業収支計画を提示して、計画した建物を建ててもらい、完成した建物を一括賃貸する賃貸借契約を結びます(このような賃貸借契約を「建設協力金方式」や「オーダーメイド賃貸」、「建て貸し」と呼ばれています)。この時、土地所有者に建ててもらう計画建物の建設資金の全部又は一部として充当してもらうために、土地所有者に交付する金員が、いわゆる「建設協力金」と呼ばれているものです。
 「建設協力金」が差し入れられるような賃貸借契約は、通常10年~20年以上と比較的長期の賃貸借契約が設けられています。「建設協力金」は、当初の期間中均等に返還する方法、一定期間据置後均等に返還する方法が多く見られ、利子を付して返還するもの、無利子で返還するものなどがあります。また、賃貸借契約書とは別に契約書や覚書を交わされる場合もあります。
 このように、「建設協力金」は、「敷金」と異なり、賃貸借契約期間中における賃料不払いや損害賠償等を担保するものではなく、また、その返済期間も賃貸借期間と必ずしも一致しないことから、貸金・消費貸借契約的な性格を有するものとして取り扱われます。
 なお、「建設協力金」とは一般的な呼び名として用いられるものであり、契約書によっては、「建設協力金」的な性格を有しつつも「保証金」という名称が用いられている場合もあります。

Ⅱ.建設協力金方式のメリット・デメリット

<貸主側のメリット>
・ テナントがあらかじめ決まっており、探す手間がない。
・ 信用力のあるテナントであれば、比較的長期間安定的な賃料収入が得られる。
・ 初期投資が少ない又はない。
・ 借地権の発生を回避できる。

<借主側のメリット>
・ 土地の取得費用が抑えられ、少ない資金で新規出店できる
・ 自らの事業計画に沿った建物が建てられる。

<貸主側のデメリット>
・ 建物が借主の意向によって建てられるため、場合によっては汎用性が低い建物となり、当初の借主との賃貸借契約が終了した後、次のテナントを探すことが難しい。また、改修工事等の費用の多寡によっては、建物取壊しとなる場合もある。
・ 多くの場合、建設協力金の返済原資を賃料収入により賄っているため、事業計画の見誤り、賃借人の経営能力、経済状況の変化等で当初予定していた賃料収入が得られなかった場合、貸主の負担が重くなる。

<借主側のデメリット>
・ 貸主の破産等により、多額の建設協力金回収不能リスクがある。
・ 中途解約又は契約途中での貸主の変更時における預託残高の清算・承継等処理が煩雑

Ⅲ.建設協力金の新所有者(新貸主)への承継

「敷金」は売買等所有権の移転に伴って、貸主の地位を受け継ぐことになりますので、借主への返還義務のある「敷金」も新所有者へ引き継がれますが、「建設協力金」は、賃貸借契約とは異なる消費貸借と扱われるため、当然には新所有者には引き継がれません。したがって、返還債務は、原則として、所有権移転後も継続して前所有者(前貸主)が負うことになるのが一般的です(最判昭和51年3月4日)。
 但し、特約で一定条件の下、「建設協力金」についても承継可能な条項が設けられていたり、売買契約にあたって、新所有者・前所有者・賃借人の三者間で合意があれば、新所有者へ承継される場合もあります。
 また、賃貸借契約によっては「建設協力金」と「敷金」の区別が判然とせず、月額賃料に比べて相当に割高な「保証金」として差し入れられている場合もありますが、判例では、一般的な取引慣行からすれば、賃料の10ヶ月相当が適正な敷金であり、それ以外は「建設協力金」的な性格であるとして、返還債務を一部承継しない一部承継説(東京地判平成13年10月29日)や、金額の多寡に捉われず、全てが返還債務を有する「敷金」であるとして全部が承継される全部承継説(大阪地判平成17年10月20日)と、判断が分かれています。
 いずれにしても、「建設協力金」が承継されるかされないかで、不動産の価格にも影響を及ぼすことになりますので、契約の内容や、当事者間への確認、場合によっては弁護士など専門家の照会を経て、慎重に判断しなければなりません。

Case A.「建設協力金」が新所有者に承継されない場合
「建設協力金」の引継ぎがない場合は、不動産の賃貸借契約とは別個のものと扱われるので、評価においては考慮外となります。そもそも、資金調達原資の違い(銀行からの借入か、借主からの借入か)によって不動産そのものの価値は変わらないはずです。但し、「建設協力金」の差し入れにより、月額の賃料が低廉に抑えられていたなど特殊な事情がある場合は、賃料改定の可能性について考慮する必要があります。

Case B.「建設協力金」が新所有者に引き継がれる場合
「建設協力金」の引継ぎがある場合は、新所有者について、預託期間中無利子又は低利の融資を受けていることと同様の経済効果を得られることになります。すなわち、保有期間中は、各期の建設協力金預託残高に対する金利等運用益相当が得られ、これは実質賃料(※1)の一部を構成するため、(その他の条件が同一であれば)不動産の収益性の面からの経済価値は向上します。(※2)

(※1)実質賃料とは貸主が得られる全ての経済的対価をいい、支払賃料に敷金等一時金の運用益及び償却額を加えたものをいう。なお、支払賃料とは、毎期に借主が貸主に支払う賃料をいう。
(※2)金融機関の担保評価等で、担保不動産の正味の評価額から、承継される(返還義務のある)一時金を控除した後の額を担保価格として扱う場合は、額面上では、承継される一時金の額が大きい程、逆に担保価格としては小さくなります。

Ⅳ.まとめ

平成20年1月1日より事業用定期借地権の設定可能な契約期間が「20年以下」から「50年未満に引き上げられたことや、リース会計の導入等により、建設協力金方式が用いられるケースは以前より少なくなってきているようですが、例えば「保証金」という名目でありながら、月額賃料の何十ヶ月分に相当する額であったり、契約期間中に一部を返還するような条項が盛り込まれているなど、「建設協力金」的な性格が含まれている一時金の授受がなされていることも少なくありません。不動産の評価においては、一時金の名目のみで判断せず、その実態を慎重に分析することが重要ですが、このような複数の性格が混合し、その範囲が不明確な一時金の扱い方は非常に難しい問題の一つです。

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